改正資金決済法が6月1日に施行され米ドルや円など法定通貨を裏付け資産とするステーブルコインが日本で発行できるようになったことが話題になったことは知っているでしょう。しかしステーブルコインという言葉を聞いたことがあってもどんな企業がどんなステーブルコインを発行しているのか知らない人も多いでしょう。どういうものがあるのか調べたので説明します。
まずステーブルコインとは
ステーブルコインは円やドルといった紙幣や貨幣の形では存在せず、インターネット上で使うデジタル決済手段です。ステーブルは英語で「安定した」という意味です。円やドルなどの法定通貨などを担保にすることで、価格が大きく変動しないように設計されています。価格の安定性を実現するように設計された暗号資産(仮想通貨)のこと。裏付け資産がないため価格変動が激しく、決済手段としての活用が進んでいない暗号資産の普及を促し、実用性を高めるために設計された。価格を安定させる仕組みの違いから、ステーブルコインは主に4つの種類に分けられる。米ドルなどの法定通貨を担保にコインを発行し、その法定通貨との交換比率を固定する「法定通貨担保型」、特定の暗号資産を担保にコインを発行し、価格を連動させる「暗号資産担保型(仮想通貨担保型)」、金や原油などの商品(コモディティ)価格の値動きに連動させる「コモディティ型」、アルゴリズムによってコインの流通量を調整する「無担保型」があります。
法定通貨担保型ステーブルコイン
ドルなどの法定通貨を裏付け資産としたステーブルコインである。ステーブルコインの価格変動を法定通貨と連動させるために、発行者は担保となる法定通貨を保有して価値を保証している
主な銘柄 USDT ,USDCなど
USDT,
USDTはテザー社(Tether http://Holdings.Ltd)が発行している米ドルと1対1でペッグされた暗号資産です。テザー社はUSDTを発行して得た米ドル で債権やローンを運用し、利回りを得ています。最近ではマイニング採掘企業や再生可能エネルギーに出資しています。テザー社の2023年第1四半期の純利益は、5月10日に発表された最新の監査保証報告書によると、14億8000万ドルになっています。3月31日時点、流通している794億ドルのテザー社発行ステーブルコインに対して準備金の超過分は、約24億4000万ドルとなっています。そんなテザー社ですが情報公開が少なく批判されたり、訴訟されたりして信用性に問題があるといわれています。
USDC
USDCはCoinbaseとCircleによって立ち上げられたステーブルコインです。
Circleは元々はP2P送金のプラットフォームを提供している企業で仮想通貨関連事業も積極的に実施しており、Poloniexの買収も行なっています。Circleはアメリカの投資銀行のゴールドマンサックスの後ろ盾を持ち、ニューヨーク州からBit Licenseという仮想通貨業許可証を獲得しています。
また、USDCは毎月大手会計事務所からも監査を受け、その結果を公表してもいます。
つまり、大手証券会社や官公庁の厳しいチェックをクリアしているため、そのサービスに信用性があるとも言えます。
仮想通貨担保型
ビットコインやイーサリアムなどの代表的な暗号資産が対象になりやすいが、法定通貨と比較する裏付け資産の信頼性が低く価格の安定にも欠けます。そのため、裏付け資産となる暗号資産の保有量を2倍に増やすなどの工夫が必要になります。
主な銘柄 DAI
コモディティ型
ステーブルコインの裏付け資産には、金や原油などの現物の商品を担保にしたコモディティ型も存在します。金を中心にコモディティはリスク回避が求められる状況で投資されやすく、一般的な暗号資産の値動きと比較すると逆の相関関係になりやすです。有事の際にはリスクヘッジに利用することが可能です。
主な銘柄 テザーゴールド、ジパングコインなど
アルゴリズム型(無担保型)
シニョレッジ・シェアは無担保型とも呼ばれ、発行会社がアルゴリズムを用いて価格を安定化させるステーブルコインです。状況に応じて通貨の供給量を調整することで、価格の安定性を計ることができます。しかしテラUSDや某I氏で有名なIRON(TITAN)などドルとの連動が崩壊することもあります。
主な銘柄 フラックス(FRAX)ニュートリノUSD(USDN)マジック・インターネット・マネー(MIM)、テラUSDや某I氏で有名なIRON(TITAN)など
ステーブルコインのメリット
他の暗号資産よりも安定性がある
法定通貨として保有できる
ステーブルコインのデメリット
価格変動が小さく大きな上昇も期待できない
裏付け資産の信用が失墜すると暴落する可能性がある
日本のステーブルコイン
JPYC
JPYC株式会社はパブリックブロックチェーンであるイーサリアムのトークン規格(ERC-20)で作られた自家型前払式支払手段扱いの日本円ステーブルコインJPYCを発行・販売しています。JPYC株式会社の運営する公式サービス(JPYC Apps、JPYC Bot)において常に1JPYC = 1円でプリペイドとの交換や物品の購入に利用可能です。USDCを発行するCircleのベンチャーキャピタル部門であるCircle Venturesより出資を受けています。
JPYC利用用途
Vプリカギフトとの交換
世界中のインターネットVisa加盟店での買い物などで利用
giftee Boxとの交換
最大500種類のラインナップの中から、好きな商品を選べるギフト
松屋銀座での代理購入
GYEN
GMOインターネットが海外法人を通じて発行している日本円のステーブルコイン。「GYEN」は、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)による規制のもと、毎月100%法定通貨によって裏付けられていることを外部の公認会計士によって公的に監査されており、監査レポートとして開示しています。バイナンスやコインベースに上場しています。